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第三の部屋へとゆっくりと入った俺達は、とりあえず部屋中をそろそろと調べて何もないことを確認した。 いや、何もない訳でもなかったが。 大きなショーケースには、怪獣だの恐竜だのの未知の生物のプラモデルが並び、映画のポスターが天井いっぱいに貼られていた。 真ん中には殺風景なベッドが置かれ、テレビとオーディオ、やりもしないドラムがあり、そしてやはり軽く風呂場と台所まである。 奥の部屋にはパソコンがあり、そこはもっぱら小説書く部屋で、奴の書斎となっている。 ちなみにこの屋敷、ちゃんと厨房と温泉も設備されているはずなのだが。 「おかしいな、みちるの奴いないな、あいつどこ行ったんだ?」 首を傾げる俺に、明地先輩は青い顔をして、 「あの老人に……」
と呟いた。 「……パソコン見てみるか?」
絶望的な状況の中、明地先輩は書斎を指さす、俺も頷いた。 「何か入れてみるか?」 明地先輩が俺に訪ねて来る。 「えと、じゃあローマ字でみちるって入れてみましょうか」
俺は席につくと、取り敢えずMITIRUと入力してみた。 『ヒント・サークル名』
「……」
俺は呆れながら言うと『小説家志望物語』とローマ字で入力する。 「助かってるといいな、あいつと湖春……」 なにやら感傷モードとなってしまった明地先輩をよそに、日記というフォルダを見つけた俺は、 「ここ!日記がありますね!」
フォルダをクリックして、中を開く、ざっと見て十年前の日記まであった、こいつ、結構マメな奴だったんだな。
『二〇一五年十二月三十一日、曇、誰か助けてくれ……』
「……また何かオチがあるんじゃないだろうな」
『十二月三〇日、曇、奴らが意思を持ち暴走し出した、困った、制御不可能、あいつらは欲望が増えすぎた』
ごくり、俺と明地先輩は息を飲んだ、今度は当たりな気がする、顔を見合わせると、二九日の日記へと矢印を進める。
「……正、これはどういうオチなんだ?」
ロボット?掃除機器? 『異物侵入、異物侵入、掃除モードに入ります、スタンバイオーケー?スリー、ツー……』
「待て待て待て!何かする気だぞこのラッパキリン!」 俺達のうろたえっぷりに心を動かされることもなかったらしい、それは無情にもそう告げた。 『ゼロ』 ラッパキリンの口から勢い良く大量の水が発射されたと思ったら、俺達二人をまとめて水圧でぶっとばした。
「うおおおおおおお!」
背中で窓をぶち破る感覚があり、空中に放り出された俺達はそのまま一階へと落下していく。 「「あああああああああああ!」」
またも水圧。
「ぶはあ!」
明地先輩と俺は、運良く池に落ちたらしい、水浸しだったがなんとか無傷だ。
「うおおおおおお!」 外に出た俺達は、そのまま一箇所に向かって全速力で走り出した。
「うおおおおお!」
懐かしい二人の姿が見えた、その姿がどんどん大きくなるにつれ、二人の顔が俺達への恐怖に変わっていくのが有り有りと分かった。
「うおおおおお!」
叫びながら事情を身振り手振りで説明しようとするも上手くいかず、そうこうするうちに時間だけが経っていく。 「失礼します、大川さん」 パチリとその手で平手打ちをくらわされた。
「はあはあはあ……あれ?」
歩はいつも通り無愛想に俺を見つめると、よしよしと俺の頭を撫でた。
「歩!湖春が!」 あたふたと交互に説明する明地先輩と俺の言葉を不機嫌そうに聞きながら、小一時間、一休さんがとんちを解き明かすくらいの間、歩は考えると、 「大体の話しは分かりました」 と言ったので、 「「マジでか!?」」 と説明した俺達の方が二人で驚いてしまった。 「とにかく、その湖春さんを吸い込んだ掃除ロボットをどうにかしなければいけませんね、困りました、図面でもあればいいのですが」
ああ、ああ、そういう訳か。 「あ!あれは何!?」
ミカ先輩が空を指さす。 「うひょひょひょひょひょ!非常食を持って屋敷の隅から隅まで徘徊すること数時間。やっとで脱出できたわい!どれお嬢さん、あやつらの図面なら儂が持ってるじゃに」 爺さんは割烹着のポケットから折り畳んだ紙を取り出すと、その数枚の図面を俺達の目の前にひらめかせた。 「爺さん何で!?」 青空の下、もはや恐怖はどこへやらの俺の問いに爺さんは笑って答えた。 「うひょひょひょひょひょ!年の功じゃな!」
歩はそれを受け取ると綺麗に並べられた本の上に並べて、ふむと考えた。 「分かりました、じゃあこうしましょう」
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