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幸い、あの水色一つ目吸引化け物はまた玄関の天井にでも張り付いているのか目に見える範囲ではいなかった、もちろん天井も確認。
「オーケーです、みちるの部屋へは、廊下の奧にある階段を一つ上がって一番奧の部屋なはずです」
廊下には所々に窓があり、ホールよりかは明かりをその空間に届けていた。
「ミカ!歩!こっちだ!」
またもや超小声で叫び続けた俺達だが、声は届かず、少し少し歩とミカ先輩の近く……玄関の化け物の近くまで近づいたその時。
「うおおおおおおおおおお!」
化け物にバレてるのだからもう小声で叫ぶこともないだろうについ超小声で叫んでしまった俺達は、奥へ奥へと廊下を走り、轟音が聞こえたと同時に階段を駆け登ることに成功した。 「……おい、これは大丈夫なのか?」 明地先輩の問いに俺は肩をすくめる。 「俺に聞かないでくださいよ」
その声に気づいてか、毛むくじゃらのそのうち四匹がこっちを見た。 「へ、へーい、ポチ、お座り」 俺の命令にポテッとその場にお座りする四匹。 「……可愛いじゃないか」 明地先輩は関心しているが、俺は内心戦々恐々であった。
「部屋に入ったら、中を通って向こうの部屋まで行くことができますよ?そうしませんか?大分この毛むくじゃらを避けて通る事ができると思うんですけど」
あろうことか、未知の生物を呼び始めた。
「先輩!やっぱり部屋通りましょうって!」
クーンという声を後ろで聞きながら、俺達は第二の部屋へと足を踏み入れた。 「お、おじゃましまーす」 靴を脱いでそれを手に持ち中へ入る俺達だったが、その声に答えた主がいた。 「うひゃひゃひゃひゃー!」
突然奥の部屋から扉を開け、割烹着姿の背の高いがっしりとした老人が姿を現した。 「うひゃひゃひゃひゃひゃー!」 老人はそのまま俺達の元へと近づいて来る。
「うおおおおおおおおおおお!」
今日一番の悲鳴であった。 「うひょひょひょひょひょー!」
老人は俺達の後ろをアスリートのごとき速さでぴったりと付いてくる。 「正―!」 先を行っていた明地先輩が振り返る。
「ぎゃー!明地先輩―!俺はいいから先に行ってくださいー!」
明地先輩……湖春先輩のことと言い、なんて情に厚い先輩なんだ!今まで見掛け倒しって思っててすいません! 「うひょひょひょー!」 気が付くと背後には、箒と羊羹を構えた老人が立っていた。 「すまん、正、お前のことは忘れない、先に行ってるぞ!」
お約束―! 「フー」 ポチ……もとい丸い毛むくじゃらが、老人に向かって唸りだしたのだ。 「うひゃひゃ?」
老人の目が光る。 「ポチ……お前もしかして俺達のために……」
すれ違いざま、明地先輩をそう呟いていた。 「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」 悲鳴は俺たちがみちるの部屋に入るその時まで延々と廊下にこだましていた。
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