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 昨日までの曇天が嘘のように晴れ渡った空は爽やかそのものだった。
 俺達は、どこまでも果てしなく続いているように見える行列に並び、その先の一分にも満たないお参りへと向かっていた。
 のろのろと動く行列も、三〇分も立てばそれなりに進んでいた訳で。

「ねえ、みちるは今頃後始末?」

 昨日の汚れは何処へやら、すっかり綺麗サッパリになった湖春先輩は、やはりと言うか結局来なかったみちるのことを訪ねてきた。

「まあ、そうみたいですよ、今日は豪華なおせち料理が来るって言ってたのに、どこまでも残念な奴ですよ」
「みちるさんも少しは反省したら良いんですよ」

 歩もホッカイロで手を温めながらそれに賛同する。

「ハハッ!一年組はみちるに辛辣だな」

 明地先輩は一番先頭でやはりホッカイロをさすっている、湖春先輩からもらった物で、俺もさっきからポケットの中で手を温めていた。
 当の湖春先輩に至っては極度の冷え性らしくて靴にも入れているらしい。
 寒さは強敵、それか湖春先輩の人生の教訓らしい。

「みちるくんは、いつか家族とでも来ればいいよ!あのお爺さんも一緒に!」

 ミカ先輩の言葉に、歩と俺はカイロをさする手が止まった。
 結局お爺さんの正体は分からずじまいだった、本当にミラクル爺さんだったのだろうか、事実は小説よりも奇なりだ。

「お、順番が回ってきたぞ」

 明地先輩が前を指さす、いつの間にか行列の先頭に立っていたらしい。
 神社は、小さいながらも昔からこの地に大切にされている神社だ。
 右から順に俺、明地先輩、湖春先輩、ミカ先輩、歩、と皆で横一列に並ぶと、俺は賽銭箱に五円玉を投げ入れ、参拝する。

(今年こそデビューできますように)

 皆同じだろう願いをかけると、次の人へと横に流れた。
 そんな時だった、
 最近アニメ化したラノベの主題歌が俺のポケットから流れて来た。
 それは、みちるに買わせた新しいスマフォから流れてきたものだった。

「あ、あいつからだ」

 着信者みちる、そう記されたスマフォのメールを開くと、そこには一通こういうメール内容届いていた、

『たすけてくれおせちりょうりが』

 ……俺は見なかったことにしてスマフォの画面を閉じた。
 初日は新しい年が来たぞと教えるように、空に神々しく輝いていた。
 今日は良い天気だ。


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